玲瓏は、四字熟語の「八面玲瓏」からとったもので、周囲を見渡せる状況を意味している。
同時に、そういう心の状況を表す言葉でもあり、いつも透き通った心静かな気持ちをもいう。(第三章より)
2008年6月16日から17日にかけて、山形県天童市で行われた第66期名人戦第6局は、羽生善治二冠が森内俊之名人に勝ち、4勝2敗で名人位を奪取しました。
これで羽生二冠は通算5期名人位獲得となり、永世名人(十九世名人)の資格を手にしました(永世称号は原則として引退後に名乗る)。
この一局は、私も現地の大盤解説会まで足を運び、固唾を呑んで観戦していました。
私が現地に到着した時は、森内名人が△2三金と指した局面でしたが、羽生挑戦者がいかにも苦しそうに見えました。
森内名人は、1日目に放った勝負手9二角の利きを生かして、3一にと金を作り、羽生挑戦者の桂馬を1七へ追い込んでいます。
対する羽生挑戦者は1日目に3四まで進んでいた銀が、4五→5六まで後退を余儀なくされていました。
この時点で、羽生挑戦者の角頭は重たく、銀も桂も分断され、攻撃の形が見えてきません。
対する森内名人は、3筋のと金と1筋からの端攻めを連動させて、一気に敵陣に切り込みそうな雰囲気です。
しかし、羽生挑戦者の▲4七銀という誰も予想していなかった一手が流れを変えました(少なくとも大盤解説でこの一手は指摘されませんでした)。
確かに、一時は3四まで進んでいた銀が5六までならまだしも、さらにもう一つ4七まで下がるというのは、手損を考えたら俄かに信じがたい一手です。
しかし、この一手で6七角の頭が捌け、おそらく当初の狙いであった▲6五歩で9二角の筋を止めると、森内名人の3一と金はほぼ働きを失いますから、いざ指されてみると、ここしかない妙手なのです。
結局、この一局の焦点であった森内名人の「遠見の角」が、この6五歩のために終局直前まで働けなかったところを見ると、この銀の回転が勝負のポイントだったように思われます。
「羽生将棋の真髄は銀にある」と森下卓九段が言っていましたが、まさにそれを象徴するような一局でした。
さて、大盤解説会や天童市の模様は、ゆめのりょけんの方で詳しく書くつもりですから、こちらではこのくらいにしておきます。
私がこの名人戦に興味を持ったのは、つい最近、羽生善治「決断力」を読んだからでした。
私は最近、ポストイットで気になる箇所をマークしながら読書をしているのですが、この「決断力」は、それこそポストイットだらけになった一冊です。
そして、何より意外だったのは、競馬予想に通じると直観した記述が随所に見られたことです。
これは驚きというか新鮮でした。
もちろん、彼が競馬予想について直接語っている箇所は一つもありません(武豊について語っている部分は二箇所あります)。
しかし、彼の将棋についての考え方を、競馬予想にそのまま当てはめると、すっきりと頭の中が整理された心地がするのです。
将棋というのは究極の頭脳戦であり、そして勝負の世界です。
頭脳を極限まで駆使しながら、紙一重の戦いを続け、頂点を極めた勝負師が語る。
その言葉が競馬予想に通じていないはずがありません。
そこで、この「決断力」を、競馬予想に翻訳しながら読み進めていくのは、なかなか面白い試みではないかと思っています。
その中で、羽生将棋の勝負強さが、何らかの形で競馬予想に生かせたらいいなと思います。
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